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詩集『垂直的な準備/knife-edge margin』ー 擬態
¥2,800
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詩集『垂直的な準備/knife-edge margin』は、岩崎眞宜と古宮汲によるジャンルレス・ユニット「擬態」から発表される最初の作品です。2人がそれぞれ書き下ろした計19篇の詩に各自でデザインを施し、全162ページのボリュームを誇る1冊として編みあげた本作の中で我々は、私的なポエジーとポップネスの共存を試み、その一つの達成へ至りました。言語的、視覚的な刺激に満ちたこの一冊を、あなたにお楽しみいただけましたら幸いです。 ------------------------------------- ステートメントI(一部抜粋) 僕たちは擬態する。 僕たちはここに至るまで、自らの言葉によって無意識のうちに仕組まれたいくつものカモフラージュ、あるいは恋と、悠然たる絶望が引き起こすカオスとを、実態に則して展開する愚直で俯瞰的な立場から、とても上手に潜り抜けてきた。 あらゆる過程において、孤独というルール、壊れかけた関係の融点は悉くその役目を放棄してしまう。長らく僕たちが求めた感覚は、やがて不意に手中へと収められることになる。しかしそれでは、少し物足りないだろう。 僕たちはここにおいて、僕たちの書き記す叙情が、ただの甘美で性急なロマンチシズムの発露として、きみに受け止められることを望まない。 どうか怖がらないで。きみには、僕たちと共に目を見開いていてほしい。感覚はこれまでも僕たちの経験をひどく執拗に妨げてきたことを、また同じように、きみは知っている。 僕たちは擬態される。真っ赤に充血した眼球が捉えるのはそれ以上に真っ赤な地平。 やがて現れる観測者のため、僕たちは今、垂直的な準備に取り掛かろうとしている。 ------------------------------------- ステートメントK(一部抜粋) 私たちは、何を準備しなければならないのか。 それは、あなたを理解の水平に添えることなく、交わりながらも直交のままでいるための、垂直的な準備である。 knife-edge margin:削りは最小限に、輪郭はできるかぎり残したまま、触れればわずかに緊張が走るほどの縁を保ちながら、歯の側面をほぼ垂直的に形成する歯科技法である。削られる部分は少なく、輪郭は保存される。 だが、その鋭さは脆さを孕むため、高度な技巧の精度が必要となり、強力な負荷がかかれば崩れ落ち、曖昧にすれば溶けてしまう。安易に削りすぎれば失われ、守りつづければきっと適合することはない。境界とは、本来そのような、ほとんど掴み切ることのできない、刃先の上に置かれた約束である。 決して内面化することのできない〈あなた〉が、そこにいるという事実。その事実を、〈あなた〉を囲い込まず、均さず、同じ直線に並べずにいるために。 私たちは、擬態する。 刃のように研ぎ、言葉によって、その境界の気配をこれでもかと鋭く立ち上げ、同一化することなく、異なるままで鋭く近づくことを選びとるその擬態の手始めに、私たちは、ここに自由詩を連ねることとする。 規則の厚みを削ぎ落とし、意味を水平に固定せず、断片のあいだに角度を残すこと。自由詩は、私たちの垂直的な準備そのものである。この断片的でありながらゆるやかで、しかしながらたしかな言語ゲームのうえで、極端に鋭く、傾いた眼差しが、完全なあなたを希求するとき、不完全な〈あなた〉がみるみるうちに証明されていく。その絶望的な連続性だけが、垂直的な準備の最中も、こちらを睨みつけるかのように横たわる。私たちは、擬態しつづける。せめて、その絶望的な連続性だけでは完全であれと強く願いながら。 ------------------------------------- 【書籍概要】 『垂直的な準備/knife-edge margin』 著・発行:擬態(岩崎 眞宜+古宮 汲) 装丁・DTP:岩崎 眞宜 仕様:B6 162頁 印刷・製本:グラフィック 価格:2,800円 発売:2026年3月 【書籍情報】 岩崎眞宜と古宮汲によるジャンルレス・ユニット「擬態」の第一作目となる詩集。両人が書き下ろした計19篇の詩を収録。 【著者プロフィール】 擬態 岩崎 眞宜(いわさき・まさのり) 2004年生まれ。写真家、詩人、映像作家。 古宮 汲(こみや・きゅう) 2001年生まれ。「号泣」の名義でYouTubeでも活動。
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写真集『yours』
¥1,800
『yours』statement- 本作「yours」は、私からあなた、あなたから私との間に絶えず流れる「視線」を対人関係の中で不可避に交換される情緒的記憶の生成装置と捉えたうえで、「私たちが二度と、互いに視線を送り、受け取り合うことの叶わなくなってしまった」世界を想定し、そこに浮かび上がるであろう心理的な「遠さ」と「やるせなさ」を、言葉を用いることなく如何ほどまでに鮮明な像としてここに現前さしむことができるのか、という試みのもと、その一つの出力として編んだ写真集です。 目の前で微笑み、あるいは驚きの表情を浮かべ、時には涙を流し、愛おしさを滲ませ、怒りをぶつけながら私のことを見つめるあなたを写真に撮るとき、私にはその営みに内包される権力性ゆえに自らの行いを自明的に正しいことだとはどうしても思えず、出来上がった写真を手に、行き場のない罪悪感に駆られてしまうことがあります。そのざらついた感覚を私に植え付ける大きなアクターとして「視線」という存在が潜在的に果たしていた役割、そしてその看過できなさ、について、私とあなた、という閉じたコミュニケーションの中にかつて交わされた視線を意図して排除する本作の製作を通し、私は痛切に実感させられるところがありました。 あらゆる責任を受け入れながら、自らの感覚に対する誠実さを保ちながら、それでも写真を撮り、あなたを忘れてやらない、ということ。向けられた視線を躊躇わず、戸惑うことなく受け入れるために、私は私の内部をどう変化させていけばよいのか。私はきっと、残された視線の先を思い浮かべながら、この作品にとどめた欠片のことを、幾度にわたって思い返すことになるでしょう。 --------------------------------------- 『yours』/A5サイズ,86ページ ステートメントが印刷されたポストカードも付属します